メモ

避難所。

がくがく

いもうとの結婚につてはなしがあると、ちちおやがかぞくぜんいんをよびだした



父親がどりょくしているのはわかった



威圧されずに、うそをつかれずに、イライラされずに、否定されずに、踏み台にされずに、目を見ながら話しかけられるのはいつ振りだろうか



もう、何年も前のこと
それも日常ではなくて
突発的にやってきたご機嫌なときだったろう




妹の旦那さんが挨拶に来るとき、あたしと娘にも会食に来てほしいと言われた



その時ここに、あたしたちが居ないことを前提とした言い方だったから




あたしは、今、目の前の事をこなす為に考えないよう意識をそらしてきた大仕事。
父親に家を出るという宣言をすることになった


あたしと娘は、精神的にも身体的にも限界をこえてしまい、精神科に通っている。
環境を換えなければ、よくなれないから、家を出ます。





父親が、おまえも俺も意地をはり合って、こうしている。と言った。




おまえたち子供や孫がいなかったら、短気な自分は定年まで働けなかったかもしれない。
美味しいものを食べさせてやろうとか、服を買ってやろうとか、可愛がってきた。
それがあったから働いてこれた。そこは、おまえたちに感謝している。


だけど、可愛がって可愛がって、沢山構ってきたのに、違うと言われて許せない。


おまえたち子供も孫も、俺は大好きなんだ。
子供を嫌いな親なんかいないんだ。






つらつらと、しゃべる。
自分のことを、つらつらつらつら



活字だったら、あたし、赤ペン入れまくって真っ赤だ。



愛しているだとか、大事だとか、可愛がっているだとか。
その言葉を吐きながら、やってる行動。



いや。そうじゃなくて。



自分のものだってワシ掴んで、振り回して、譲りたくないんだって、絶対手放さないんだって、自分から離れるなって、言う事をきけって、癇癪起こして地団駄踏んで、思い通りにならないことが絶対許せなくて、閉じ込めて、手足を捥いで、罰を与えて。




愛してるとか、可愛がってるというより。
自覚できていない父の欠損を埋めるのに、必要なもの。


父にとって、あたしの存在は確かにものすごく必要。


あたしは、そういうものだと感じた。





それでも、父親の口から止めどなく吐き出される、可愛がってきたマーチ。




父があたしに話をするために、今、ぶつけたい攻撃的な感情を我慢しているのは理解していた。



でも、身体が、心が、頭が、割れた陶器をつなぎ合わせたものに負荷がかかったみたいに、キシキシいいながら、つなぎ目が潰し合って、グシャグシャ粉々になっていく。父の顔をみることができない。俯くどころか、不自然に首が真横をむいて。呼吸が浅くなっていく。早くしゃべり終わって。この場から退場してもいい時を必死に待つしかなかった。



だけど、父の語りは、あたしの返答がなければ終われない。



だから、いった。



わかった。



わかった。



わかった。




何を堪えているのか、自分でもわからない。
手や首が硬直して、震えるし、もうパニック状態になってた。



母が、これは駄目だと近寄ってきて、抱いてくれたけど。
頭や顔をかきむしりたい衝動が凄くて。息がうまくできない。



それでも、自分が可愛がってしてきたと思う事を、連ねる父に、母が「わかったって、言ってるよ。その話はもうわかったって。駄目だから。もうおしまいにして」と言った。


耳に、誰かが走る音が響いた。
娘が自室に逃げ込んだのがわかった。
娘が耐えられなくなったのは、まさに、あたしが父親を相手に、壊れてしまいそうになる様子だから。



父親が、娘の様子に何か毒づいた。
それから。




俺は、おまえも、孫も、好きなんだ。
だから、何かあったら、頼ればいい。




あたしが、金切り声で「わかった。ありがとう。おせわになりました」って絞り出したら、母の中での、あたしにつけてもらいたかったケジメがつけられたと判断したのか、じゃあ、そういうことで、あんた部屋行って休みなさい。飲める薬あるなら飲んで。と強引に解散させた。







がくがく



がくがく




膝が笑う。



息が上手くできない。
自室に逃げなきゃと足を運びながら、娘のところに行かなくちゃと思った。



きっとすごく怖かった。


あたしが壊れてしまうかもしれない。
娘はその状況から目を背け続けて、現状を維持していたよね。



だけど、もう足が無理で。
とりあえず自室までいって。
震えがおさまるまで、お茶を飲んで、タバコを吸って。
おさまったら、娘の所に行かなくちゃと焦っていたら、娘の方からきた。



顔を真っ赤に腫らして、ボロボロ泣きながら。



怖かった!
怖くて逃げた!
ママのことジイジと同じ感覚で意地張ってるっていった!
全然違う!
ママは崖っぷちで押し相撲されてた!


ワーワー泣いて。




怖い思いさせた。ホントごめん。
でももう大丈夫だ。
引っ越しのハードルなくなったから。


あたしが、こうなってしまうのは、ジイジを相手にしたときだから。
家から出たら、もう大丈夫。


あんた、自分がされてきたことは、ママより軽いし短いからって言ったけど、あたしがジイジを許せないのは、ずっと昔の事から今までの事じゃないんだよ。
もう昔の事なんか、正直どうでもいいの。


あたし、あんたがこうやって苦しむ状況を、自分の都合でつくるジイジがどうしても許せなかった。子供を育てる為に、歩み寄ろうとか、話し合おうとか、協力してほしいって持ちかける話を、片っ端から叩き潰した。その上これ見よがしに、ありえない事やりたい放題やってみせつけた。それが一番我慢ならなかった。


あたしたちは、こんな中で捻くれてきたけど。
治す為に、ここ出るんだから。


引っ越し、もう邪魔されるかもってビビる必要がなくなった。


だから、大丈夫!




落ち着くまで2人で抱き合って。
それから、少し、荷物を作った。



娘の腕に、新しい傷があった。



いつリスカしたのと聞いたら、一昨日。と言った。



傷跡を撫でて。
悲しいよって言った。



あした、ほとんどの事が決まる予定。



転校先の学校と住所のことが決まれば。



もう、あとは巣作りだ。

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