メモ

避難所。

どうして魔女になったのかしら

あたし、魔女。


いつの間にか、魔女になってたの。




魔女だからね。
沢山魔法を使ったのよ。




カラフルなキャンディを出して見せたわ。
挿絵が飛び出して動く本を朗読して見せたわ。
集まってくる子たちを、ほうきに乗せて夜空をドライブしたわ。



お屋敷は、訪ねてくるゲストが楽しめるように、魔法を詰め込んだわ。
毎日、泣き虫だったりお調子者だったりいろんな子が笑えるように、大忙しだったの。




あの日まで。



あたしが出した魔法の本にある挿絵の場所に行ってみたいんだと
ゲストが言った、あの日まで。



もっと素敵な場所があるかもしれないよと言った、あの日まで。



魔女の胸に、呪いが灯ったの。
ビックリしたわ。魔女に呪いがかかるなんて。


一緒に行こうか?と聞いたら言われたの。




魔女には何でも出せる魔法があるんだから、ここでいいじゃない。って。



少し得意気に、別れの挨拶もしないで背を向けたわ。




胸に灯った火種が、触れたところから広がるの。




ハラハラ メラメラ ハラハラ メラメラ





  



あたし。どうして魔女なのかしら。







気が付いたら、一緒に魔法の本を開いていたゲストの頭が無くなっちゃって。
あたしは口の中に広がる鉄の味を、ストロベリーソースに変える魔法をかけた。




あたし、どうして魔女になったのかしら。




魔法を使うのは何のためだったかしら。




キャンディを出したのは誰のため?
本の挿絵を動かしたのは誰のため?
空を飛んだのは誰のため?



だれの?なんの?ためだったかしら?



でも、魔女になっていなかったら。



キャンディが出せないわ。
本は動かなくなってしまうわね。
空も飛べなくてあたりまえよ。




ゲストたちが今日もゾロゾロやってくるわ。




魔法があって当然と思ってやってくる。




あたしは、なんで魔女になったんだっけ。



胸がハラハラすると、メラメラ燃える。



呪いを解くにはどうすればいいんだっけ。






思い出そうとしながら、沢山のゲストをまるかじりしたわ。


もうお腹がいっぱいよ。
なのに呪いは解けないの。


ストロベリーソースでいっぱいの口の中。



あら、あなた。
まだ残っていたのね。
飲み物はいかが?


お茶をしながら、教えて貰いたいことがあるのよ。




どうして、あたしは魔女になったのか。




教えてちょうだいな。
そしたら、とびきり可愛いキャンディを出してあげる。


そんなに怯えてどうしたの。


本の挿絵を動かしてほしいの?
それとも空の散歩に行きたいの?



魔法が欲しいんだろう?





 あ た し は 


  ま ほ う で で き る こ と な ん か 




 な に ひ と つ や り た か な い け ど ね 







じゃあ、なんで、魔女になったのかしら。




最後のゲストは一緒にお茶を飲んでくれなかったわ。
走って逃げてしまったから。



でもね。


あの子は知っていたのかしら。
あたしが魔女になった理由。



ハラハラ メラメラ 燃え尽きたあたしの胸。
心だけじゃ済まないぞって、あたしの身体も灰にしちゃったの。




だけど、あたし魔女だから。
夜が明けるころには元通り。
ツギハギされたみたいに痛む身体で、玄関を開けたわ。



ポストに手紙が入っていたの。





今度は僕がオヤツをご馳走するよ。
僕を食べるより、僕と一緒に食べるマフィンの方が美味しいよ。


いつも魔法を頑張ってくれてありがとう。
また来るよ。




って。






あたしがどうして魔女になったのか。
聞かれて逃げたあの子の手紙だって、わかったわ。



だって、呪いが涙に変わって、流れ落ちたんだもの。
これがあの子の答えなんだと思ったわ。




そうだった。
溜め込んだ思いを初めて魔法に使った時。


あたしの手から、コロンと飛び出したキャンディを見た子が笑って拍手したの。





あたし、魔法でキャンディを出すことは、楽しくもなんともないけれど。
あの子が笑って褒めてくれたから。



魔法を使って、今まで欲しかったものが手に入ったから。



もっと魔法を使うわよって、張り切ったの。




あたし、寂しくて魔女になったの。
思い出したわ。














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